『無手無冠の男―ダバダ火振という奇跡』書影
NONFICTION / ノンフィクション

それでも男は、四万十川の未来を信じた

無手無冠の男―ダバダ火振という奇跡

著者/依光 隆明

借金7億円。誰も信じなかった栗焼酎。誰もやらなかった無農薬米。
栗焼酎「ダバダ火振」を全国ブランドへ育てた山本彰宏と、妻・紀子の物語。

FORMAT / EDITION
上製本
1,800円+税本文264ページ四六判・上製・カバー付
口絵カラー4ページISBN 978-4910805221
ABOUT THE BOOK

書籍内容

高知県四万十町大正の小さな酒蔵「無手無冠(むてむか)」。四代目となった山本彰宏は、四万十川の米、栗、そこで暮らす人々に足場を置いた酒造りを目指した。

経営を引き継いだとき、待っていたのは7億円の借金。倒産の瀬戸際にありながら、彰宏は常識に縛られない発想と並外れた行動力で理想の地酒造りに突き進んでいく。多くが徒労に終わる中、奇跡のように生まれたのが栗焼酎「ダバダ火振」だった。

やがて「ダバダ火振」は全国ブランドへ。奇跡の栗焼酎はいかにして生まれたのか。山本彰宏、紀子夫妻と「無手無冠」の歩みを追ったノンフィクション。

一緒におればおるばあ、味のある人やった。
ほんと男の中の男やった。――山本紀子
MESSAGE FROM THE AUTHOR

著者からのメッセージ

令和の世にこそ薦めたい。「無手無冠の男」、その人生

あの半沢直樹が愛飲する酒、「ダバダ火振」は高知県の四万十川上流で生まれました。なによりの魅力は栗焼酎らしい澄んだ味。作者の池井戸潤さんは「味も香りも透明で上品。スッと喉に入ってきます」と表現しています。澄み切った味を生んだのは四万十川の自然ともう一つ、その自然を守りながら「地酒」にこだわった男の存在でした。

四万十上流の小さな酒蔵へ婿に入った四代目、山本彰宏さん(1939~2017)。当主になったとき、蔵には返し切れないほどの借金がありました。経営を立て直すべく彼はペダルをこぎ続けます。借金と格闘し、業界の常識と戦い、周りの目を気にせず、声をあげ、理想を追いました。周りが「もう倒産だ」と思ったときもペダルをこぐ足を止めませんでした。土俵際で踏ん張り、信じ難いほどの気力で持ちこたえます。蔵の名を「無手無冠」と変えたのはそんなときでした。冠を持たず、自然のままに、妥協せず。倒産の瀬戸際を歩みながら、四万十の自然、さらには地域の発展を考え続けて行動する。「今だけ、カネだけ、自分だけ」の現代から見たら理解できない男としか言いようがありません。かつて、高知の田舎にそんな男がいたのです。

神は見ていたのでしょう、奇跡が生まれました。闇夜の光だった栗焼酎「ダバダ火振」が誕生から10年後に大化けするのです。「ダバダ火振」は売れに売れ、品薄感が人気をあおってまた売れて…。まさに奇跡でした。しかし奇跡を生んだのは運ではありません。山本彰宏さんの足取りを調べていくと、それがよく分かります。すさまじい努力と山のような失敗。血の汗を吸った土の上にたった一つ、花が咲いたのです。神が微笑んでくれたのです。

『無手無冠の男』は山本彰宏さんと妻の紀子さんに焦点を当てたノンフィクションです。ページをめくれば今夜の酒の味が少しだけ変わるかもしれません。

著者 依光隆明

AUTHOR

著者紹介

依光 隆明 (よりみつ・たかあき)

1957年高知市生まれ。1981年、高知新聞社入社。中芸支局長、室戸支局長、東京支社編集部長、社会部長、編集局次長などを歴任。2008年12月に朝日新聞社へ移り、水戸総局長、特別報道部長などを務め、2022年3月に退職。

2001年、高知県庁の不正融資を暴いた「県闇融資報道」の取材班代表として日本新聞協会賞を受賞。2012年には福島第一原発事故を追った「プロメテウスの罠」の取材班代表の一人として、2度目の日本新聞協会賞を受賞。現在は高知市在住で、地域ニュースサイト「News Kochi」のメンバーとして活動している。

著書・共著に『白球黄金時代』『黒い陽炎―県闇融資究明の記録』『プロメテウスの罠』など。

(刊行時現在)