"オンラインゲーム “廃人”生まぬ規制は必要?
“ネトゲ廃人”という言葉がある。インターネットを使ったオンラインゲーム(ネトゲ)にのめり込むあまり、現実の社会から逸脱したり、適応できなくなった人たちのことだ。県内でもオンラインゲームで昼夜逆転の生活を送る子どもたちが、不登校や引きこもりになるケースが増えている。何らかの対策を取るべきだ。
オンラインゲームには、仲間とチームを組んで敵を倒し、新しい武器やポイントを手に入れていくロールプレーイングのほか、仮想の都市・社会で自分の分身をつくり、その中での生活を運営していくものがある。
ソフトを購入して遊ぶテレビゲームが一般的にオフラインの「閉じた世界」なのに対し、オンラインゲームには無数のユーザーがリアルタイムで参加している。ユーザー同士は実際の顔かたちや性格は分からない。ゲーム上のキャラクターがすべてで、優れた武器や装飾を手に入れれば注目を集められる。
仮想世界で互いに助け合ったり、交渉したりするにはコミュニケーションが必要になる。チャット(会話)で知り合う仲間は目的が同じだけに親近感が生まれる。チームで敵を倒した際の達成感、仲間に頼られたり、ほめられたときの優越意識…。ゲーム内の経験を重ねるほどに存在感を発揮できるようになり、現実では得られない自己肯定のひとときがあるようだ。
ただ、オンラインゲームにはテレビゲームのようにすべてのステージをクリアして「終わり」という瞬間がない。刺激的な物語がほぼ果てしなく続く。昼夜を問わずパソコンに向かい続ければ、普段の生活に支障が出るのは間違いない。
県内でも3日間オンラインゲームをやり続け、倒れてもネットから抜け出せずに学校を辞めてしまった生徒がいた。昼夜逆転の生活で睡眠障害に陥り、薬に頼るようになった子どもがいる。本紙の取材に「“友達”の7割がネットの中」と答えた少女もいる。中高生ばかりではない。インターネットが家庭の必需品になっている現在、ユーザーの低年齢化が進み、家にいることの多い主婦なども予備軍になり得る。
ノンフィクションライター芦﨑治氏の著作「ネトゲ廃人」(リーダーズノート社)によると、ネット先進国の韓国ではオンラインゲーム中毒の若者が増えて社会問題化し、政府が寄宿型の治療学校を運営しているという。死者まで出ている同国の状態は、日本の暗い将来を示唆しているかのようだ。
ファンタジックな仮想世界から抜け出すには、今の日本社会はあまりにも魅力がないかもしれない。ただ、引きこもりなどの原因の一部がオンラインゲームにあるとすれば、規制を求める動きも出てこよう。
ネット社会の特長である自由と匿名性はあくまで保証すべきだが、現実の“廃人”をこれ以上生んではならない。