「毒」がなくてはつまらない  「蜜」がなくては諭しめない  「骨」がなくては意味がない

Opinion|2024/4/8|木村浩一郎(リーダーズノート)

イエロージャーナリズムの卑怯な手口
地雷を踏んでしまった『週刊新潮』

週刊誌に対する警告

 A提訴事件においては、同人と教職にある前夫との間に生れた長女Bが自殺するや、「週刊実話特報」は、読者の興味本位に、無根の事実を掲載し、しかも公然本名をもって提訴人の名誉を侵害した事実が明らかとなったが、最近における週刊誌その他報道記事において、斯様な無責任の記事が横行していることは、目を掩うものがある。 

 なるほど。この文章の執筆者は「週刊実話特報」なるものが、自殺にいたった事件を報じる際に興味本位にウソを書いて死者らを冒涜したのだとかなり怒っていらっしゃるようだ。
      まるで近年の週刊誌批判にも読めるのだが、実はこれは64年も前に書かれたものだ。

  1959年(昭和34年)10月24日、日本弁護士連合会(以下、日弁連)は、この文章を理由として、「週刊誌等の表現自由の乱用反省方の件(宣言)」というものを発表した。 さらに3年後には「週刊誌等報道機関の表現自由の行過ぎ反省方の件(決議)」なるものも出し、「近時、新聞・雑誌特に週刊誌並びに映画・ラジオ・テレビ等において個人のプライバシーを毀損する場合が多いにも拘らず殆ど無反省であることは遺憾である」と警鐘を鳴らしている。

 すなわち半世紀以上まえから日本の週刊誌は、いいかげんで興味本位にウソを書き、非難されてなお無反省にそれを繰り返す、そういう位置付けだったという証左だろう。そしてそういう存在だと知っていながら、下世話な好奇心を満たすものとして愉しみ、僕らはどこかでそれを長年、許容してきたに違いない。 

 今日は、週刊新潮という権威と影響力を持った味わい深い週刊誌について語ってみよう。
 後述するように、この週刊新潮はここにきて、かなり危ない詐欺的手法―それは海外のタブロイドに勝るとも劣らないーに手を出した。それが露呈してしまう、いわば地雷を踏んだようだ。今後、卑怯なイエロージャーナリズムの烙印を押されるかもしれない。

 ではまず、タブロイドとはどういうものなのか。源流を探ると、英国で1898年に創刊された「デイリー・メール」という日刊新聞にたどりつく。
 当時、英国には、裕福な上流層をターゲットにした「ガーディアン」や「タイムズ」があり、一方で中流層以下を狙って、娯楽、スポーツ、芸能、ゴシップ、セックス、スキャンダル、ギャンブルなどの情報を提供する下世話な大衆紙として誕生し、人気を集めたのが「デイリー・メール」だった。

 また米国のタブロイドとして悪名高い「ナショナル・エンクワィアラー」にしても、その前身は1926年に創刊されたハースト系の「ニューヨーク・エンクワィアラー」である。こちらも捏造ありセックスあり挑発あり、ゆすりや恐喝ありだった。
 戦前の1933年10月の大阪毎日新聞などは、それを知ってか知らずにか、このタブロイドに載った挑発的な記事をわざわざ引用してみせ「ハーネスト系の新聞大々的に英語圏国民団結を叫ぶ」と報じて、「軍縮会議開会をひかえこの種の好戦的宣伝が次第にその鉾先を現してくるのは必然である」などと危機感を煽っている。
 まさに、タブロイドはこういった歴史上のきな臭い話にも頻繁に関係してきた。

 これらはやがてゴシップ週刊誌として勢力を増したが、そのサイズから「タブロイド」と呼ばれている。カラー印刷になり、表紙には目をひく派手な著名人のカラフルな写真を刷り込み、センセーショナルなタイトルを掲げた。その一方で、内容は写真がほとんどで、取材という取材はなく、憶測、創作、捏造、引用の刺激的なゴシップを載せるのを得意とした。このエグさが一般の好奇心に火をつけ、世間の話題をさらうようになる。いわゆる退屈させない雑誌だ。タブロイドは、ときにスキャンダルをつかむと地下交渉で金をゆすりとる、日本で言えばゴロ雑誌のようなこともしてきた。

 星川正秋によれば、1980年代にはすでに、米国で単にタブロイドといえば、「ナショナル・エンクワィアラー」、「グローブ」、「ナショナル・エクザミナー」、そして「ザ・スター」の4誌のことだと理解されたらしい。大型スーパーマーケットにずらりと並べて売られたこれら週刊誌の内容は、当時より日本の女性週刊誌に近いものだったという。

 タレント側は、芸能界との持ちつ持たれつの関係もあるため、こういうタブロイドに多少のインチキを書かれても反論できなかった。そのため1981年に、女優のキャロル・バーネットが「ナショナル・エンクワィアラー」に対しての名誉毅損裁判に勝訴した時には、ハリウッド中が喝采したという話が面白い。

 そのように、欧米においては正当ジャーナリズムと、スキャンダルを面白おかしく扱うゴシップ週刊誌のようなイエロージャーナリズムとで、ビジネスを棲み分けしてきた。

 その後は、芸能人VSゴシップ週刊誌の法廷闘争は山ほどある。
 メジャーなところでは、2005年の元俳優のキャメロン・ディアスが英国の「ザ・サン」に、2006年にはハリウッド俳優のケイト・ハドソンが英国版の「ナショナル・エンクワイアラー」に、2009年のケイト・ウィンスレットが「デイリー・メール」を、訴えて勝っている。また2015年には、ケイティ・ホームズ(トム・クルーズの妻)が、麻薬中毒者であると主張する記事を「スター」に掲載され訴訟に持ち込み勝訴している。そもそも、いいかげんな商法のいかがわしい週刊誌であるから、万一、訴えられてしまえばボロが出るのだが、書かれる側も放置プレーの方が多いのは、日本も同じ事情だろう。

 アジアでも、この手のゴシップ週刊誌は人気で、たとえば台湾では、2017年にリン・チーリン(林志玲)に関しての「壹週刊」の記事が裁判沙汰となった。リンはスーパーモデルで、のちの日本のミュージシャンであるEXILEのAKIRAの奥さんだ。リン側は盗撮をした記者を刑事告発して、加えて民事訴訟でも勝訴したことによって、壹週刊は休刊に追い込まれた。

 ちなみに、日本では20世紀末ごろまで活字媒体は右肩上がりだった。1998年を見てみると、6630銘柄の雑誌が一年間に37億2311万冊発行されている。そのうち月刊誌は22億6256万冊で、週刊誌は14億6055万冊であり販売金額にして合計、約1兆5315億円の売上だ。 その中で、女性雑誌を眺めてみると、月刊誌と週刊誌を合計した推定発行部数は年間3億9017万冊。これは日本の全雑誌の発行部数の約1割にあたった。(出版指標年報1999)。

 日本では、いま、YOSHKI、松本人志、伊東純也、デヴィ夫人らのビッグネームが週刊誌に牙を剥いて注目されており、結果は予断を許さない。すでに週刊誌そのものの存在、あり方が社会問題化しつつあるかに見える。

これは単なる芸能スキャンダルか?

 僕は、この事件の告発本でもある「笑顔の人ー仲本工事さんとの真実」(三代純歌著)を出版した版元であり、今回、日本の週刊誌問題に首を突っ込むこととなった。 その経緯はすでに書いているのでここでは語らないが、関わってみると、この三代純歌(以下、純歌)という女性歌手に対して週刊誌らが手を染めたやり方は、とにかく凄まじい。こういう週刊誌ビジネスが合法なのであれば、どんな詐欺ビジネスも合法だろうと、優秀なジャーナリストらも冗談を言うほどだ。 

 いまの行き過ぎた不良な週刊誌に、悪徳ビジネスやオレオレ詐欺、あるいは政治家の不祥事などを非難する資格はないという声はSNSでも日増しに高まっている。 とりわけ、この純歌事件においては、週刊新潮というジャーナリズムの一端を担っているはずのポピュラーな週刊誌が一役買っていることで、この騒動が、単なる芸能スキャンダルとして切り捨てられない問題に発展しそうな気配がある。ゴシップを扱うのはいい。だがここまでくると政治的に保守系右派の雑誌というのは、詐欺に手を染めている卑怯な出版集団ということになる。

 考えてみればいい。ウソでもなんでもいい。知名度がある人物の話を面白おかしく過剰なタイトルをつけて発売すればビジネスになるのはわかる。

 しかし程度の問題がある。一人の女性が生きていけないほどに、何社もが束になって長期間にわたって記事を捏造して、追い込み続けるのかということだ。

 もし僕が純歌と同じ仕打ちを受けたら、性格上、黙ってはいられない。「昔、ビートたけしらが講談社を襲撃したように、逮捕されてもかまわないから殴り込みをかけるよなあ」と言ってみたら、あるジャーナリストは「それはいけない。法治国家なんだから暴力はいけない」と真面目に反論してきた。報道の暴力や触発されたSNSの攻撃で自死している人もいるし、死ぬぐらいなら殴り込めばいいという僕の考えは、一蹴されてしまった。

 いいだろう。では法治国家なのだから、この週刊誌らを言論と法で裁いてもらいたいものだ。純歌のように、束になってウソを書かれ続けた人を、泣き寝入りさせてはいけないはずだ。

 すでに純歌は、2024年2月27日に、週刊新潮、女性自身、週刊女性という3誌の発行元に対して、名誉毀損で計8250万円の損害賠償を求めて提訴し、司法記者クラブで記者会見もした。公判は4月末から始まる。 純歌が民事で提訴しているのは、週刊新潮の3本分、女性自身の4本分、週刊女性の1本分、つまり雑誌の冊数でいうと8冊にも及ぶ。よくもまあ、これほどの数を訴えたなという人もいるかもしれない。それでも、彼女が訴えたのは、彼女を攻撃した週刊誌の一部にすぎない。

 純歌の場合は、思想や政治団体、宗教団体、労働組合などの後ろ盾はまったくない。また大手の芸能プロにも所属していない。有力な上級公務員や政治家のコネクションもない。そこに詐欺集団につけこまれたというのが真相だ。

 純歌には、ザ・ドリフターズ(以下、ドリフ)の仲本工事の妻という、ネームバリューしかない。週刊誌がターゲットにしたのは、加藤茶や仲本工事の知名度が使えるものの、後ろ盾がなく、とても反撃などできそうにない弱者だった。一応は民主主義国の、あるいは一応の先進国のはずの日本で、こういう悪質な週刊誌ビジネスの暴走を許していいのだろうか。

 まだ係争中の話。週刊誌に書かれていることは事実だろう、純歌がやはりウソつきで悪い女なのではないか、お前は純歌サイドの人間だろう、などと思う人もまだまだ多数いるに違いない。それはある意味、健全な観察眼といえる。 ただこの件に関して言うならば、僕は、だれよりも多く該当記事の詳細にいたるファクトチェックをしてきた。ディベートするならこの週刊誌らには負けない。 そのうえで、この純歌による事件に、どのような週刊誌ビジネスの悪い手口を露呈させる特異性が秘められているかについて、今日は、指摘しておきたい。

 大まかな流れでいうと、ドリフの仲本工事の、27歳下の妻である純歌が、目黒の自宅兼店舗を離れて横浜に住むようになったことに端を発している。 これを週刊新潮は、モンスター妻の純歌がゴミ屋敷に年老いた仲本を置き去りにして老人虐待をしているとする記事を書いた。純歌サイドに言わせれば、掲載された写真や証言もいかさまであるという。僕は記事を読んで、その内容はイエロージャーリズムの、いわばタブロイドの手口だとすぐに分かった。それほどタイトルと本文がミスマッチだった。しかし多くの人はこの記事にだまされた。

 そのわずか6日後に仲本は交通事故死した。すると、仲本が病院で危篤になっている最中から、通夜、葬儀、さらには1年後の一周忌にいたるまで週刊誌がウソを書きたて、この純歌を袋叩きにした。こういう記事を信じるほうも信じるほうだが、僕は、何度読んでも、身内が突然死んで悲しんでいる女性のことを、なんの根拠もなく「ウソ泣き」などと書く記者や編集者の神経が信じられない。 

 ジャーナリストの浅野健一が言った「メディアリンチ」に、ジャーナリストの安田浩一が名付けた「ネット私刑」が加わったものになり、純歌は極度に追い込まれていった。記者会見の様子は、ノーカット版の動画がアップされているので、報道というフィルターを通じてではなく、純歌の生の訴えを聞いてほしい。 

 メディアリンチは、それが事実を正確に描いた報道であっても起こる。しかし純歌の場合は、詐欺的な捏造記事によるメディアリンチのおかげで、ネット私刑を受けている。しかもそのなかには「3つの週刊誌に、同時に同じウソを書かれる」という前代未聞のケースがあった。それが、後述する加藤茶事件だ。ここに、イエロージャーナリズム特有の手口が用いられたという特異性があると、私は認識している。
「もし私が、本当のことを書かれたんだったら、私は裁判まで起こせなかったよ」
 純歌のつぶやいた言葉には、かなりの信憑性があった。  

加藤茶は怒鳴ったか?

 争っているのは、病院で加藤茶が純歌を怒鳴ったか、いや怒鳴ってないか。単にそれだけの話。くだらないといえば、くだらない。どうでもいいといえば、どうでもいいことだ。 

 そのどうでもいい公益性もない小さな話だから、それを何十万部もの週刊誌に掲載し、何億もの月間PVのあるウエブサイトにも載せ、その悪口を、全国津津浦浦に配信してもいいじゃないか、という理屈はまったくなりたたない。

 舞台は、三代純歌の夫である仲本が、交通事故で瀕死の重体だった病院の中。何人かの関係者が病院を訪れる。ICU(集中治療室)の中には、同時には3名しか入れないために、純歌は会釈をして訪問者をICUに招き入れていた。ICUには長年連れ添った自分の夫が変わり果てた姿で横たわっている。泣き腫らした顔を気にしながら懸命に来訪者を気遣っていた。  

 純歌は自分の苦しさを抑えて立ち振る舞っていた。そういう深刻な場では見舞客とも会釈と挨拶程度でほとんど会話はない。そこにいた人々は、だれもがその重い空気と静けさを体験している。しかも訪れたのはすべて氏名のわかる関係者のみ。 ところが、この病院の静かな空間で、ドリフの加藤茶が純歌に対して「仲本がこうなったのはお前のせいだと怒鳴り上げた」という内容の記事が、11月1日と11月2日に発売の週刊誌3誌に、同時に掲載されて書店に並んだ。  

 週刊誌の本文に飾られた仰々しい見出しは、まるで世界大戦でも始まったかのような大きさだ。これはまさに、イエロージャーナリズムの、悪意のあるゴシップ週刊誌特有の手口と言っていいだろう。まずはタイトルの過激さで注目させる。そもそも捏造なので、本文は関係のない誇張された悪口で埋め尽くすしかない。 

 僕はその場にいたという純歌を含む5人から、当時のことを何時間もかけて聞いたが、加藤茶が怒鳴った場面を見た人はただの一人もいない。純歌が証言するように、加藤茶は静かに訪れ、礼儀正しく振る舞い、そして帰っていった。

「そんな話は、加藤茶さんにとっても失礼です。わたしは加藤茶さんに怒鳴られていません。だれにも怒鳴られてはいません」 

 純歌はこれまで何度もそう話している。 しかも、現場にいた関係者のだれ一人として、どの週刊誌からも取材を受けていない。各週刊誌ともに派手な大きな見出しを掲げながら、本文には、タイトルにある加藤茶が怒鳴ったという話は、わずか数行あるのみである。 くどいようだが、過激な見出しをつけ売れさえすればいいというイエロー週刊誌ビジネスだから、本文には、その話はわずかでいいのだ。 しかもその部分はほとんど同じ。

 週刊新潮と週刊女性には、純歌が一度しか撮られていないという位牌を持った写真のカット違いの写真が、なぜか掲載されていた。同時の発売でなければ、写真を引用することもあるだろうが、この2社が同じカメラマンを雇っていたのだろうか?
 病院関係者の、たとえば医師や看護師などの証言もない。加藤茶のコメントも、所属事務所の回答も載っていない。来訪者のコメントもない。3誌の週刊誌の本文には、その現場を見たという「テレビ関係者」とそして「芸能関係者」という、匿名の証言者がそれぞれ登場しているが、そういう人は見舞いに来ていないことも判明している。

 わずかな取材をした形跡さえもない。もし僕がこの記事の責任者ならば、こういう原稿には決してOKを出さない。そういう程度の低いものだ。 

 つまり加藤茶が怒鳴るような場面はなかった、ということである。

  これが例えば、1誌だけが書いたのならば、裁判に負けても致命的になるような話には発展しないだろう。  

 民事裁判ではタレコミに騙されたのだと弁明できるし、その記事を裁判で争わなければ、日本の裁判所が下した慰謝料をさっさと支払えば済む。週刊女性だけが書いたとしても、あるいは週刊新潮だけでも、1誌ならばそれで逃げられる。証言した者も取材源の秘匿を理由に公にしないこともできるだろう。
 ところが3誌が同時にこの話を書いたとなると、まったく話が変わってくる。 なぜ、実体のない架空の話を、3誌が同時に書くことができたのか、という重大な疑いが残るからだ。  

 たとえばである。読売と朝日と毎日が、同日に、富士山が爆発したとか、北朝鮮が攻めてきたとか、あるいはネズミがクマを撃退したとか、一人の男が全裸で踊ったとか、 何でもいいが、何かウソの記事を書いたとしよう。もしそれがウソであったならば、間違いでしたでは済まないはずだ。 どうしてそういう事実ではない記事、フェイクニュースができたのか、どうして3つの新聞がウソを同時に書いたのか、それなりの説明責任が生じるだろう。

 週刊誌は、毎週のように政治家やいろいろな人の責任を追及している。にもかかわらず自分たちがチョンボをしたときには「私たちは新聞ではなくゴシップ誌なので、そんな説明責任はありません」とでも言うのだろうか。日本のメディアは「しょせんゴシップ週刊誌なので彼らは何をしてもいいんです」というとで済ますのだろうか? 疑問は尽きない、
 週刊新潮やデイリー新潮は、テレビコメンテーターの「わかしん。」こと若新雄純の過去の女性関係の不祥事を暴いた結果、若新は、メディア出演や講演を取りやめ大学教員を辞職しているのだ。  これでは犯罪を犯す教師が、不良生徒に説教しているようなものだ。

 司法記者クラブでの記者会見で、なぜ、この3誌を訴えたのかと聞かれた純歌は、明確に「3つの週刊誌が結託していると思うので」と返答した。 実際、3つの週刊誌にどういう情報共有があったのかは分かっていない。しかし、「向こうとあっちと、こっちの記事が、たまたま加藤茶が純歌を怒鳴りつけたことになったんです」という説明はとおるはずもない。

刑事告訴も視野に

 一連の純歌バッシングで、同じ週刊誌とはいえ、新聞系のAERAやサンデー毎日は、相乗りしていない。とても便乗できる話ではないと察知したのだろう。 またほとんどのスポーツ新聞は便乗していないどころか、提訴したという事実を掲載し、むしろ純歌の言い分を積極的に報じた新聞もあった。 スポーツ新聞というのは、芸能、娯楽、ギャンブル、エロもあり、一般新聞よりかなり大衆的なのだが、どこも週刊新潮らの暴走に加担しなかった。 ここに日本のスポーツ新聞の理性や良心を感じてしまう。彼女は、日本中から非難されていると思いつめ、一生後ろ指をさされるとおののき、生きていくのが嫌になったというほど、このニュースは瞬く間に日本中を駆け巡った。 おそらく、純歌が損害賠償を求めた民事提訴に踏み切ったことや、週刊誌訴訟のスペシャリストである喜田村洋一弁護士に委任して記者会見まで開いたことは、3週刊誌の側から見れば想定外だったかもしれない。

 よく人は簡単に「訴えてやる」と口にはする。しかし実際に大手の週刊誌を相手に、しかも個人で民事訴訟するのはかなりハードルが高い。

  逆にいうと過激なタイトルをつけてウソを交えて書いても、こいつは訴えてはこないだろうと判断するのが、イエロージャーナリズムのやり方だ。実際に人は、少々でっちあげた記事を書いても、おいそれと訴えてこないことを彼らは知っている、と欧米メディアは書いている。  

 今回の名誉毀損による民事提訴では、裁判は週刊誌ごとに行われる。 週刊誌の側からすれば、勝てない思えば、この加藤茶の件では争わず、慰謝料をさっさと払えばいいだけの話である。

 週刊誌サイドにとって幸いなことに日本やいくつかの国では、米国と違って、訴額がいくら高くても高額の賠償額にはならない可能性がある。 争わなければ、法廷では、その事件について、いろいろと情報を開示しないことも可能だ。そのため、もし純歌がすべて勝訴しても、この濡れ衣の数々は、ほとんど解決されないかもしれないと純歌サイドの人たちは考えている。

  実際、これほどの悪口が蔓延すると拭い去るのは容易でない。民事提訴では、3誌がどのように情報を共有したのか、だれが悪意を持ってタレ込んだのかも暴かれないかもしれない。朝日や毎日、NHKといったいわば人権問題に敏感な媒体でさえ、こういう芸能スキャンダル的なものは毛嫌して、積極的にはならない可能性がある。

 純歌には国民が関心をもつほどのネームバリューもないので、ニュースバリューがないと判断されるかもしれない。 そもそも報道機関は、常に自らも名誉毀損で訴えられるリスクにさらされているので、こういう話には後ろ向きな傾向がある。
 民事提訴して勝訴しても、純歌の濡れ衣は晴れない可能性がある。そこで純歌サイドは、名誉毀損ではなくて、偽計業務妨害罪などによる刑事告訴も視野にいれているようだ。  

 偽計というのはウソを指す。たとえば、ここの店のうどんには、覚醒剤が入っていますと書いた紙を店のシャッターに貼り付けたとする。ウソであれば偽計である。実際に損害が出たという証明は必要ない。当局は、多くの場合しぶしぶでも、証拠を吟味して、法的にはその申し出を受理しなければならない。

  純歌の場合は、実際に、さまざまな場所で長年にわたって歌手活動を行っており、その業務をウソの記事で妨害されたわけだから、3週刊誌の発行元を、刑法233条の「偽計を用いて人の業務を妨害した」という犯罪で告訴できると専門家は言う。

「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する」というもので、純歌サイドがこの刑事告訴に踏み切るならば、逮捕者が出る可能性もある。

刻まれたデジタルタトゥ

 SNSが相応に力を持ってきた時代にはニュースを売る側にとっても、いかにインパクトのある見出しをつけるかが収益を上げるポイントになっている。実際に、発行部数を年々減らしている週刊誌も、購読者層の限られたスポーツ新聞も、インターネットの積極的な活用に舵を切っている。 

 ただ前述の3週刊誌は純歌バッシングの捏造記事で儲けようとし、スポーツ新聞各紙はそこには便乗せずに、むしろ純歌の言い分や提訴の事実を書いた。いずれも仕事ではあるものの、そこには、詐欺師と優秀なビジネスマンほどの、いわば天と地の差がある。

  週刊新潮の電子版は、2022年9月、サイト開設以来初となる月間1億4000万PVを記録した(自社サイトのみ、外部配信は含まず)と宣伝している。また、NO.1国民的週刊誌のPCサイトと宣伝する女性自身の場合も、2022年12月27日のニュースリリースでは、月間2億1500万PVを記録したとある。

  PVはページビューであるから、同じ読者を含めても、これらのサイトは、1か月間に、そんな億を超える回数、見られているということである。純歌のことをバッシングした記事や写真が、どれほど見られたかは現段階では不明であるが、これらのニュースはことごとく、Yahoo!ニュース、BIGLOBEニュース 、LINEニュースなどで配信されているから、書かれたほうはたまらない。

  ひとつの週刊誌だけでも威力があるのに、3誌+αだ。デジタルタトゥというように、これほどばら撒かれた悪評はなかなか消せないだろう。 

 すなわち、ネット時代には、一度、こういう週刊誌に記事を書かれてしまうと、それが週刊誌の戯言(ざれごと)だと放置するわけにはいかなくなる。

  週刊誌を読まない若年層にまで、記事は瞬時にネットに配信されスマホに届く、すると前述のようにメディアリンチが、ネット私刑につながる。 

 司法記者クラブでの記者会見で、純歌が3誌結託による疑惑があると訴えたときに、多少なりともそこ触れたのは、日テレの「ミヤネ屋」と、東洋経済オンラインのみだった。 

 彼女の人生にとって最も重要なのは、まずはこの冤罪を晴らすことだ。意地の悪い美女という週刊誌によって貼られたレッテルをはがし、天真爛漫でお茶目で、何より正直な性格の彼女が、そのキャラも生かして、これからも歌手としてやっていきたいという、ささやかな希望にエールを贈り続けたい。 

2024年4月8日
文責/木村浩一郎

#週刊新潮 #仲本工事 #加藤茶 #三代純歌 #提訴 

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  • 【記者会見・ノーカット版 前編】(ここ)  
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  •  #週刊新潮 のウソとワナ ここまでやる?(ここ
  • 『笑顔の人ー仲本工事さんとの真実』(著者/三代 純歌)詳細(ここ
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