「毒」がなくてはつまらない  「蜜」がなくては諭しめない  「骨」がなくては意味がない
「毒」がなくては詰まらない 「蜜」がなくては愉しめない 「骨」がなくては意味がない
LEADERS NOTE
「毒」がなくては詰まらない 「蜜」がなくては愉しめない 「骨」がなくては意味がない

【東京新聞 掲載】


"ネトゲ依存を考える 横浜在住のジャーナリスト 芦崎 治さん(55歳)
国民性も一因に

インターネットのオンラインゲーム(ネトゲ)にのめり込み、社会生活から逸脱した人たちを描いたノンフィクション「ネトゲ廃人」(リーダーズノート)を、五月に刊行した。「複数の知人の子どもがネットゲームにはまり、不登校や引きこもりになっていた。親は非常に悩んでおり、これは一体何なんだということで、取材を始めました」 話を聞いた全国の二十五人の証言は衝撃的だ。毎日二十時間のゲーム漬けで、大学を中退した学生▽夫婦ではまり、両親がゲーム中は邪魔をしないようにしゃべらない子ども▽深夜にネットゲームに参加してくる小学三年生-。 なぜ、ここまで依存してしまうのか。ゲーム自体の面白さに加え、物語に終わりがないネットゲームの特性や、義理人情に弱く他人に合わせようとする日本人の国民性を挙げる。「知らない人同士が組んで冒険に出るゲームでは、途中で一人が抜けると効率が落ちる仕組み。せっかくバーチャルな世界で仲間ができたのに、裏切ることができないと。だからなかなか抜けられない」。廃人といっても、他人と議論するコミュニケーション能力があり、頭のいい人が多かったという。

対策遅れる日本
本の中で、ネットゲームにはまり、昼夜逆転した中学生を立ち直らせた担任の先生が出てくる。「母子家庭だったり、親から見捨てられたりした子も多い。粘り強く注意する人が必要で、いかにゲームをする時間を減らせるかが大切だと思います」と指摘する。死者が出るほど深刻な韓国や中国では、政府主導で対策に取り組んでいるが、日本は遅れているという。 これまで、ずっとフリーで活動。ジャーナリストの立花隆氏や鎌田慧氏らとの仕事を通して、取材姿勢やインタビュー術を学んできた。「取材は、お互いが共感して、琴線が触れ合うところまで話し込んでいく作業だと思うんです。『親にも話したことないのに』と言われることもあります」 かつて「日本環境ジャーナリストの会」の会長を務め、産廃など環境問題に長年取り組んでいる。「今回の仕事も、自分の中では環境問題とつながっています。インドアになった彼らに、農作業など体を使って快感を味わわせることが必要。受け入れる環境系の団体と、どうやってつないでいこうかと考えています。能力がある彼らは、リアルな社会でもきっと活躍できると思います」

(西尾玄司) <私の履歴書> 1954年 富山県黒部市生まれ 1974年 立教大学法学部入学 1978年 同大卒業 同年 朝日新聞記者・辰濃和男氏の私設助手 1987年 写真週刊誌「FLASH」記者 1989年 テレビ朝日系番組「ザ・スクープ」記者 2005年 「日本環境ジャーナリストの会」会長(07年まで) 2007年 桜美林大学非常勤講師 2009年 「ネトゲ廃人」刊行"
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「毒」がなくては詰まらない 「蜜」がなくては愉しめない 「骨」がなくては意味がない